1話「勇者召喚の国①」戦闘記録  【最弱のコピー魔法師】 

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公開日: 2015年12月8日火曜日 最弱のコピー魔法師 自作小説


ユキトとルナ。
穴に吸い込まれた先で、二人が見た光景は、青空がよく見える広大な広場だった。運動場みたいに周りをフェンスで囲い、大きな倉庫がいくつも並んでいる。
広場には自動小銃で武装した軍人が百人強。魔法師と思しき人間が四人。
その中で一番偉そうな白銀の鎧をつけた男が叫んだ。見事な顎ヒゲの中年だ。

「突然だが、異世界の勇者諸君っ!
ロト国にようこそ!我が国は君たちを優遇する事を約束する!
私は騎士団長のアレックスだ!君たちをこの世界に召喚した魔法師である!
お互いに良い関係を築こうではないか!」

唐突すぎる宣言。しかも言語は日本語だ。
別の世界で日本語が使える訳がない。
ユキトは状況が分からなくて困惑した。
――21世紀に流行したWEB小説みたいな展開なんて現実に存在する訳がない。
自分を慕って抱きついてくる可愛いルナを守るためにも、少しでも情報を得ようと、偉そうな騎士団長の紅い目を睨みつけて問いかける。

「……この世界で日本語が使えるのは何故だい?
まさか異世界の世界共通語だったりするのかい?」
「違う言語を使っても意思疎通ができる!
そういう翻訳魔法が世界全体にかけられているのだ!
私は、勇者達が住んでいた異世界の方こそ信じられないがね!
違う言葉を使っているせいで全く分かりあえない?世界大戦?
きっと地獄に違いないな!アハハハハハッ!」

騎士団長は大笑いした。完全に地球の事を馬鹿にし、見下している発言だ。
ルナはムッー!と可愛い頬っぺたを膨らませて怒っている。
しかも、疑問がまだまだ残っている。ユキトは謎を解くために質問を続けた。

「僕達をこの世界に呼んだ理由は?
世界が滅亡の危機にでも瀕しているのかい?」

地球での『幸せ退役軍人ニート生活』をぶち壊されたユキトの漆黒の眼が、騎士団長をより強く睨みつける。
騎士団長は日常会話でもするような感じに、自然にユキトを見下し、偉そうに話してきた。
階級制度が根付いた国、特有の反応だ。

「この国は、常に周辺に住む蛮族どもと争いを続けているのだ!
占領地を拡大しすぎて、戦力が幾らあっても足りない!
だから貴様らをわざわざ兵士にしてやろうと思ったのだ!
将官待遇を約束するぞ!しかも敵は自動小銃くらいしか装備していない蛮族だから弱い!
命の危険は少ないのに、酒は飲み放題!美女を抱き放題!功績次第では貴族にもなれるっ!
見たところ、貴様らも軍人っ!この破格の待遇なら……王国に仕えるだろう?」

騎士団長の下品な目線が幼いエルフ娘『ルナ』を見ている。
ルナは性的な視線に嫌悪して、エルフ耳が下にペタンッと垂れた。

「ウチ、あの人殺してもええかなぁ?」
「少し待ってね、ルナ」

誘拐犯の元で、嫌々働くのはご遠慮願いたいユキトは、どの選択が最善か考え込む。
敵の戦力は歩兵が百人以上、魔法師が四人だ。しかも、分析魔法で周辺を探査したら、歩兵の数は数千人に膨れ上がる。
遠くには戦車や戦闘機もある。
ユキト達を召喚した魔法は、全くの未知のもの。どういう攻撃を仕掛けてくるのか予測できなくて、戦闘時の計算が面倒くさい事になりそうだ。
――やれやれ……相手の手の内が見えない内に戦うのは得策じゃないなぁ……。さて、どうすればいいのだろうか?
ユキトは脳内で戦闘結果を何度も計算する。未知の魔法の要素があるせいで、勝率は20~90パーセントを行き来していた。
命を賭けるには、分が少し悪い。
騎士団長を真っ先に殺して良いなら、勝率は99%以上なのだが、ユキトが使うコピー魔法の特性上、今すぐ殺したらデメリットばっかりだ。
殺すのは魔法をコピーした後が最善。
地球に戻れたら、軍人年金で幸せイチャイチャ生活が待っているだけに、本当に困った。

「騎士団長の旦那、こいつら怖がってますぜ?
俺に交渉を任せて下さいよ」

そう言ったのは、紅い髪の男だ。ボサボサの髭を伸ばし、何人も人を殺した眼をしている。つまり、躊躇いもなく民間人を虐殺できるタイプだ。
脳から出る波長から、物理操作に特化した集団戦闘向けの魔法師だと、ユキトにはすぐ分かった。
騎士団長は。その男とまるで事前に打ち合わせをしたかのように、自然に頷いて

「おお、そうだな。ヤン中尉。
勇者も同郷の君の方が話しやすいだろう。交渉を任せるとしよう」

スムーズなやり取りをして、交渉をヤンという男に任せた。
ヤンは、ユキト達に猫みたいな茶色の眼を向け、ニヤリッと笑う。

「俺はヤン中尉だ。地球では中華軍(ユーラシア大陸軍)に所属していた。
第三次世界大戦が起こる前に、士官学校丸ごと王国に無理やり拉致られて……いや、クラス丸ごと異世界召喚されてよ。
ここで良い暮らしをさせてもらっているんだ。
どうだい?あんたらも王国に仕えないか?
蛮族は弱いし、仕事は雑魚を虐殺するだけだから楽だぜ?」
「……その前に、僕達をここに召喚した魔法を見せてもらえるかな?
こう見えても学者肌でね。未知の魔法に興味があるんだ。
勧誘はそれからやってくれると嬉しいね。」

ユキトは地球に帰りたいから、冷静に答えた。
――使った瞬間に、その魔法を劣化コピーしてやる。相手の手の内が分かれば……勝率は跳ね上がる。
さぁ、手の内を見せろ。騎士団長とやら。
召喚魔法で地球に戻って、僕はルナのヤンデレっぷりを解消して、平和な日常を過ごしたいんだ。
だが、ユキトが期待している返答は来ない。
ヤン中尉は、ポケットから腕輪を右手で掴んで出して、見せつけるように掲げて笑う。

「召喚魔法?
俺達の仲間になれば、幾らでも見せてやるよ。
この腕輪を付ければ、今日からお前らも王国の軍人だ」

あまりにも不自然すぎる腕輪を付けろ展開。
ユキトの脳は、常に起動している【分析プログラム】で腕輪を分析している。
――腕輪の内部にチタン製の針が格納されている……僕が付けた瞬間に針が飛び出て刺さる、という訳か。
しかも、針の表面には、依存性が超高そうな特殊な薬物が付着している。
きっとその針に刺されたら、僕もルナも薬物依存性に陥って王国の操り人形。
つまりこれが意味する事は……こいつらは敵だ。僕達を罠に嵌めて奴隷にしようとする敵勢力だ。
僕達の幸せニート生活をぶち壊した邪悪な敵だ。
こうなったら先手必勝。未知の魔法を使う相手に有利に戦うために、先に攻撃するしかない。
戦う覚悟を決めたユキトは、ルナのエルフ耳に口を近づけて

「ルナ。歩兵の相手を頼む。
僕は魔法師を潰す」
「了解したんやで~」

命令を下した瞬間、ルナの物理操作魔法が発動。
窒素を圧縮した弾丸五千発を作成。窒素弾丸を360度全方位に向けて、一気に加速させて解き放った。
歩兵達の身体をグサッグサッと窒素の弾丸が貫き、消し飛ばす。
騎士団長と魔法師三人の所へと飛んできた弾丸は、彼らの物理操作魔法で作られた氷と窒素の壁で遮られた。
攻撃を容易く防いだヤン中尉は苦笑する。

「へぇ……そっちのお嬢ちゃんは結構、強そうだなぁ。
でも幾ら強くても、数は俺らの方が圧倒的だぜ?
複数の思考パターンから繰り出される攻撃に対処できるのかよ?
時間が経過すれば、他の魔法師も援軍に駆けつけてくる……お前ら、どうするんだ?」

その言葉が言い終る前に、ヤン中尉達の物理操作魔法が起動。氷の弾丸、窒素の弾丸、炎の弾丸などを千五百発を作成。
加速してユキト達の場所めがけて飛ばしてきた。
秒速1km。圧倒的速度とエネルギー。しかも基地のあちらこちらから歩兵達が撃つライフル弾が飛んでくる。
これら全てを防ぐのは並の魔法師なら不可能だ。
だが、ユキト達は並の魔法師ではなかった。
【重力プログラム起動】
ユキトが得意とする劣化コピー魔法の一つが発動。三人の魔法師がいる場所、千五百発の銃弾の進路上の重力が数十倍になった。
秒速1kmの弾丸の雨は、すぐに地面へと落下して突き刺さる。
歩兵達の遅いライフル弾は、ルナが作った窒素の壁が防いだ。
ヤン中尉はこの光景を見て、ありえないという感じに驚愕している。

「ば、馬鹿なっ!?重力を操作しただと!?
まさか、貴様は日本軍のエース魔法師サクラか!?」
「僕の軍人年金生活を破壊した事を、地獄で後悔するが良い……」

【物理操作プログラム起動】

ヤン中尉達の頭上に、尖った氷の槍が五十個生成された。
数十倍の重力で加速されまくり、一気に三人の魔法師の身体を貫くコースだ。
物理操作に特化した魔法師では、これを防ぐ方法はほとんどない。
盾を頭上に展開した瞬間、盾そのものが重力の餌食になって落下し、ヤン達を押し潰すから盾を作れない。
ヤン中尉は最後の瞬間まで、一部、機械化した頭脳を働かせ……ありえない事に気が付いた。
――二つの魔法を同時に使える魔法師だと!?普通、魔法師は能力を特化する事で性能を大幅に上げているはず!
ま、まさかっ!こいつっ!日本が作り出した最弱で有名なコピー魔法師かよ!?
理論上、全ての魔法を使える代わりに、使う魔法の性能が十分の一から百分の一以下になる器用貧乏のクソ魔法師だろ!?
え?そんな雑魚に俺、殺されるのか?!
やべぇ!氷の槍が迫ってくる!思考を加速しても打開策が浮かばねぇ!
誰だ!コピー魔法師を最弱だと評価した奴!?
これ完全に無限に色んな戦術を取ってくる最悪すぎる魔法師だろ!?
同時に三つの魔法を使えるとかチーターだ――
ヤン中尉の思考はそこで停止した。
仲間の二人の魔法師と一緒に、全身を氷の槍で貫かれて、消し飛んで即死。
基地周辺にいた歩兵数千人も、ルナの物量任せの遠距離攻撃で全滅していた。
生きているのは、黒い軍服のユキト、白いコートを着た可憐なエルフ娘ルナ。
そして……腰を抜かして座り込んでいる騎士団長だけだ。

「き、貴様らは何者だ!
なぜ、そんなに強い?!なぜっ!我らに反抗するのだ!?」

恐怖に震える騎士団長の問いに、ユキトは静かに答えた。

「僕かい?
僕は地球連合軍所属の魔法師『雪村ユキト』さ。
最強で最弱のコピー魔法師と、狭い世間では言われているよ。
……よくも、僕の年金生活をぶち壊してくれたね?」

そのユキトの背後で、銀髪の美少女がビシッと指でVサインを作って

「ウチはユキトのお嫁さんになりたい美少女やで!
研究所産まれのピチピチギャルや!」

エルフ耳がピョコッ!ピョコッ!元気よく動いた。



後篇に続く


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作者コメント + 今回の感想まとめはこちら
http://suliruku.futene.net/Z_saku_Syousetu/Tyouhen/Kopi-/c2.html




最弱のコピー魔法師】☚まとめたページ

13 件のコメント :

  1. (´・ω・`)二度目の修正はゆっくり後日

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  2. (´・ω・`)「問おう。アナタがわたしのゆんやーか?」

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    1. パルメ(´・ω・`)いいえ、ゆっくりです

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  3. コピーは言うほど強くない気がする。

    特殊能力者と出会えなければ産廃だし、雑魚をコピーしても雑魚。
    といって圧倒的強者にぶち当たるとコピーする前に死ぬし、
    と考えるとコピーする時点からして結構大変だしリスキーだし割りに合わないことが多い。

    利点は運がよければ成長が早いことと
    (十分な数と質のコピー能力をそろえられたときに)汎用性が高くなることだけど
    これも元々汎用性の高い能力(魔法を作る魔法とか願いを叶える魔法とか)と比べると微妙。

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    1. コピー魔法師(´・ω・`)そんなー

      主人公(´・ω・`)ぶ、分析魔法で効率よく戦っているから大丈夫大丈夫・・・・
      地球連合軍でよく使われている魔法とかコピーしたし

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    2. コピー系能力で強いのってどちらかと言えば、よくセットで付いてくる同時に並行して行使できるとか相手を解析できる能力がメインな気がする(無限の剣製とか写輪眼とか)
      ただ真似るだけだと素のスペックや物量でこられるとどうしようもないしな。ある程度進むと結局コピーはおまけ扱いに

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    3. 物語的には1000の術使いこなす万能型よりも一点特化の必殺技をいかにして使うかみたいなキャラのほうが、簡単にピンチになれるし逆に他のやつでも勝てない強敵でも主人公が相手だとメタれるので俺tueeしやすい展開にできるし、能力の欠点を補う仲間とか増やす理由になるしストーリーの上で作者も扱いが楽。

      万能型だと逆にピンチとそれを乗り越えるシチュエーションをいろいろ考える必要があるし、
      「◯◯の状況の時なんで◯◯とか使わないの?」とか読者に突っ込まれまくるのがオチだしね。

      実際NARUTOでコピー忍者のカカシ先生というのが居たけど、
      まともにコピーメインでいくと強すぎるので血継限界でコピーできる能力に制限かけたり、
      コピーを使うと疲労で倒れたりするのでコピー能力は後半殆どつかわれなくなりましね。

      あんまり万能型をみないのはそういう理由なのにあえて挑戦するなんてさすがパルメさんやでぇ……

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    4. 劇場版のドラえもんがポケットが故障してる無能になるのも、
      未来の道具を複数使ってすぐ解決できるんだったら盛り上がりもクソもないからだしね、
      なんでもできるってのは逆に話が作りづらい

      削除
    5. (´・ω・`)だから、こういう設定にしたんだ。

      主人公(´・ω・`)長期戦すると、脳みそに負荷がかかりすぎて死ぬ!⇒ルナたん必要

      強力な魔法を、短期間にたくさん使うと死ぬ

      基本的に超絶劣化コピー。ほとんどの魔法はコピーしても意味がない。」

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    6. それだと>>3のカカシ先生コースでは? 
      使うと倒れるくらい疲労すごいところなんてまんまだし、結局コピーできる程度の技は実践で使わなくなったんだが……
      プロの大ヒット作家でも使いこなせないのを挑戦するとは余程パルメさん自信あるのね頑張って

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    7. (´・ω・`)応援された。やったー

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    8. パルメさんに秘策あり、>>5程度では命を削って強い能力を使う割りとよくある展開で、
      まったく万能型の作中での使い方の解決になっていないがそこらへんはどうにかするという、
      自信とギミックがあるんだろ多分、黙って作品を見ればわかるさきっと

      削除
    9. 大胆な予想。
      命じゃ無く精子を削る。
      強い力を使うとパルメガンの銃弾が減少していってやがて不能に……。

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