【エルフ娘の世にも不思議な旅 】 2国目  中編 最悪の専制政治の国

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公開日: 2014年8月31日日曜日 ラッキーの不思議な旅 自作小説



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エルフ娘の世にも不思議な旅
エルフ娘と妖精さんの世にも不思議な旅

2国目 愚民の国
 
中編  最悪の専制政治の国


ラッキーは、20年ぶりに思い返したかのように、民主主義から専制主義になった国を再び訪れていました。
もちろん、今回も不法入国です。
国は以前よりも寂れていて、国中の建物がボロボロです。
親がいない子供や、物乞いが以前来た時よりも遥かに増えていました。
冬を越せずに死んだ膨大な人間達の事も考慮すると、恐ろしい事です。
国民のほとんどが貧乏人で、明日食べる物にも困る貧困国になっていました。

「ラッキー、帰ろうよぉー。
この国、寒いし、皆暗くてやだぁー」

頭にいる妖精さんが文句を垂れますが、ラッキーは無視しました。



ラッキーは20年前と同じように、大きな広場を目指して歩きます。
国のあちこちに偉大なる独裁者アドルフ・ヒドラー伍長閣下のポスターがありましたが、破られていたり、落書きされていて、無事なポスターが一つもありません。
大きな広場まで歩くと、広場の真ん中に100mサイズの巨大な石像が立っています。
鼻元にちょび髭を生やした格好良い中年の像でした。軍服らしき服装を着ています。
この像は、この専制主義の国の指導者【アドルフ・ヒドラー伍長】の像で、とっても真っ黒で豪華です。
ちょうど、大勢の怒り狂った群衆が、この像に縄を掛けて引っ張っています。
民衆は口々に文句を言っていました。

「この無能の独裁者!」
「こんな像は倒してしまえ!」
「専制主義なんて民主主義以下のクソだ!」
「ヒドラー伍長は人間のカスだ!独裁者反対ー!」

ラッキーは、20年前と何にも変わらない国だと思ってガッカリしました。
専制主義の結末が20年前から読めていたので、ラッキーの予想通りすぎて退屈です。
ラッキーは欠伸をして、自分の頭に乗っている妖精さんに話しかけました。

「この国つまんない」

「ラッキー、なら、こんな国に来るのやめようよ……」

「予想外の結末が待っていたかもしれないから、それはやだ」

二人が会話している間に、100mサイズのヒドラー伍長閣下像が群衆の力で倒れて行きます。
像はそのまま群衆の方へと向けて倒れて、群衆を踏み潰し、最後は地面に落ちて粉々の石の欠片になりました。
広場は血と肉のミンチだらけで、人間の子供が見ればトラウマになる光景です。
さすがに、この大惨事は予想してなかったので、ラッキーはクスクス笑います。
目の前の光景が、とても現実の物だとは思えなかったからです。
滅多にある光景じゃありませんでした。
周辺に居た群衆は仲間の死に泣き叫びながらも、明日への希望を捨てません。
彼らの手には、【共産主義の素晴らしさ】という表紙に大きな文字が描かれた本があったからです。
ラッキーの知的好奇心が刺激されてワクワクしています。
ちょうど、群衆の中の1人に、ラッキーが知っていた人が居ました。
20年前の軍人さんです。
年老いて初老の域に達していましたが、まだまだ元気そうです。
軍人さんの所までテコテコ歩いて近付いて、ラッキーは話しかけました。

「軍人さん。
この国は、どんな風に酷い国になったの?」

「ん?
見た事あるお嬢さんだなぁ。20年前に見たような・・・まあいいや」

軍人さんは、ラッキーが20年前の少女そっくりだと思いましたが、すぐに考えるのを放棄しました。
ラッキーに親切に解説をしてくれるそうです。

「この国はな。
20年ほど専制主義っていう、愚劣な独裁者が国を支配する糞みたいな体制の国だったんだよ。
お嬢さんは、幼いから理解してないかもしれないが、専制主義は本当に最悪だ。
国の財産を個人が欲しいままに散財して、1万人の住民を退去させて宮殿作ったり、国家財政の半分を独裁者の妻の贅沢のために使われた。それを批判する国民には苛烈な拷問と処刑が待っていたんだ。
特定の個人に無限の権力を与えると、そいつは腐って、国全体を衰退させてしまうから、専制主義は欠陥だらけで本当に駄目だ」

「軍人さん。
本当に……人間は大変だね」

「お嬢さん、この国の不幸を他人事のように言うがな。
専制主義は、民主主義とは違う意思決定の速さ、圧倒的な権力のおかげで戦争には強かったが、民衆の暮らしの改善や言論の自由がなくて大変だったんだぞ。
民主主義の方が遥かにマシだと思えるくらいにな。
今じゃ、この国は貧乏人だらけで、明日に食べる飯にも困る奴らだらけだ」

軍人さんが、ラッキーの金髪の頭に右手を置いて、撫で撫でしました。
この時、ラッキーが風の結界を一部解除しなかったら、軍人さんの右手は風のバリアーで粉砕されてバラバラになって消滅している所でした。
そして、ラッキーは、軍人さんがもう片方の手に持っている本がとても気になります。

「軍人さん。
その本はなーに?」

「ん?この本か?
これはな。
共産主義っていう素晴らしい思想について描かれた本なんだ。
なんでも異世界のソビエト連邦って所で実現した地上の楽園について描かれているらしい」

「その本は、どんな内容なの?」

「良い内容だったぞ。お嬢さん。
富は民に全て公平に分配し、搾取してくる資本家(金持ち)に独占させるなとか、民衆のための事を思って書かれてる。
俺達の国は、これから共産主義の国になって、また新しくやりなおそうとしているんだ」

ラッキーは、色んな国々を巡った事があるので、共産主義がどんな結末を齎すのか知っています。
でも、忠告するのをやめました。
だって、無駄だからです。
この国の人間そのものが駄目なのだとわかっているので、何も言わないでおきました。
軍人さんは未来へ希望を輝かせて話を続けます。

「俺達は今度こそ、理想的な社会を作るんだ。
誰も差別されなくて平等で豊かで良い国をな。
お嬢さんが大人になる頃には、この国は良い国になっていると思うぜ」

ラッキーは軍人さんの顔を見つめました。
軍人さんの顔はとっても素敵でした。
もしも、ラッキーが人間の女の子だったら惚れてしまうくらいに良い顔をしています。
ラッキーは、この国がどのような結末に至るのか気になりました。




ラッキーは気になった事があるので、最後の問いかけを軍人さんにします。

「ねぇ、軍人さん。
アドルフ・ヒドラー伍長閣下は今も生きてるの?死んでるの?」

「ん?
そんな事も知らないのか?
一カ月前に、ヒドラーはこの広場で石投げの刑に処されて、群衆の投げる石で苦しんで死んだよ。
奴が死んだ時、俺達は心の底からスッキリした!
奴は俺達の期待を裏切ったんだから、当然の報いだ!」

軍人さんは相変わらず愚民です。
ラッキーはその可笑しさにクスクス笑いました。
見惚れるような可愛い笑顔だったので、軍人さんもニコニコ笑っています。



「何も変わってない……もうやだ、この人間」
妖精さんは嫌そうに呟いていました。






後篇に続く

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マザーテレサ(ノ●ω●) 人間にとってもっとも悲しむべきことは、病気でも貧乏でもない。 自分はこの世に不要な人間なのだと思い込むことだ。